技術情報・技術コラム
異種金属の溶接が求められる理由や、溶接工法について解説
異種金属溶接を必要とする理由
異種金属を溶接する主な理由としては、「製品の軽量化」「製品の性能向上」「コスト削減」、の3つが挙げられます。
製品の軽量化
強靭だが重い金属へ部分的に軽量な金属を接合することで、製品に必要な強度を確保しつつ、軽量化を図ることが可能となります。
製品の性能向上
耐食性や延性や熱伝導性等、それぞれの金属が本来持っている特性を生かし、最適な製品性能を引き出すことが可能となります。
コスト削減
高価な金属を使用する部分を必要最小限にして、他の部分には安価な金属を接合することで、コストの削減が可能となります。
異種金属溶接の種類と用途
前述したように、異種金属を溶接する理由はいくつかあるので、その目的によって使用する金属は異なります。
異種金属の組み合わせと用途をいくつかご紹介いたします。
銅とアルミニウム(Cu + Al)
この組み合わせは、電気自動車や冷却装置、送電線等に利用されます。導電性に優れている銅ですが、比較的高価で重量もあります。そこで銅には劣りますが導電性が有り、比較的安価で軽量なアルミニウムと接合することで、コスト削減や軽量化することができます。
鉄とアルミニウム(Fe + Al)
この組み合わせは、主に自動車に利用されます。鉄は強度が高く安価ですが、とても重いです。
そこで、軽量なアルミニウムと接合することで、軽量化を図ることが可能です。またその結果、自動車の燃費が向上し、二酸化炭素の排出量を減らすこともできます。
鉄とステンレス鋼(Fe + SUS)
この組み合わせは、耐久性が求められる建築資材や圧力容器等に利用されます。ステンレス鋼は耐食性や耐候性に優れております。そこに安価な鉄を接合することで、コストの削減ができます。
他にも、ニッケルとタングステン(Ni + W)やチタンとステンレス鋼(Ti + SUS)、アルミニウムとマグネシウム(Al + Mg)等、様々な組み合わせがあります。
異種金属溶接で用いられる主要な溶接(接合)工法
金属はそれぞれ融点や熱膨張率等、特性が異なります。また、溶接時に金属間で化学反応も生じますので、異種金属を溶接する際には適切な溶接工法を選ぶ必要があります。様々な溶接工法が存在しますが、代表的な工法をご紹介いたします。
バット溶接による異種金属溶接
材料の端面同士を押し付けながら電気を流し、その際の電気抵抗による発熱を利用して溶接する工法です。薄板や丸棒の溶接に利用されます。
アーク溶接による異種金属溶接
アーク放電の熱を利用し、母材を溶かして溶接する工法です。ステンレス鋼や鉄等の溶接性の良い材料に幅広く利用されます。
ファイバーレーザー溶接による異種金属溶接
レーザー光を収束させて、局所的に母材を溶かして溶接する工法です。主に薄板の溶接に使用されます。
摩擦攪拌溶接(FSW)
母材に回転するツールを押し付けて、その際の摩擦熱によって溶接する工法です。主にアルミニウムと他の金属との溶接に使用されます。
摩擦圧接
異種金属の材料同士を回転させながら押し付けて、その際の摩擦熱で接合する工法です。前述の摩擦攪拌溶接(FSW)と、摩擦熱を発生させる材料(回転させる材料)が、異なります。
別のツールも使用するのか、母材だけなのかの違いがあります。また、FSWは板材に適しており、摩擦圧接は棒材や管材に適しています。
冷間圧接
金属を加熱せずに、室温程度の常温で材料同士を強く押し付けて接合する工法です。電気部品や電子部品の接合に使用されます。
異種金属溶接にバット溶接を用いるメリット
異種金属溶接にバット溶接を用いることのメリットを紹介します。
溶接強度が高い
バット溶接は、母材同士を突き合せての固相接合ですので、溶接強度は高くなります。
溶接品質が安定している
バット溶接は、ワーク突合せ面全体を同時に加熱し接合するので、熱歪みが少なくなります。また、毎回同電力量を与えることができるので、溶接のばらつきが少なく、安定した溶接を行うことができます。
溶接時間が短い
バット溶接は短時間での溶接です。例えば、Φ5程度のワークの場合、約1秒で溶接が完了します。
大気中で溶接可能
バット溶接ではシールドガス等が不要ですので、大気中で溶接が可能です。
ライン組み込みが容易
バット溶接は、溶接前の準備作業が少なく、溶接動作も直線的な動作のみで完了しますので、製造ラインへの導入が容易に行えます。
作業者スキルが不要
バット溶接は自動で行いますので、作業者が代わっても同等の溶接ができます。
ランニングコストが低い
バット溶接では、溶接棒やシールドガス等は使用しませんので、基本的に消耗品は電極のみです。
バット溶接機による異種金属溶接事例!
バット溶接機により、アルミと銅(Al+Cu)の接合が可能です。
アルミ(Al)と銅(Cu)の接合方法としては、レーザー溶接などが広く知られておりますが、このような母材を溶かして接合する溶融接合でアルミ(Al)と銅(Cu)を接合すると接合部に脆弱な金属間化合物の層が生成され、継手強度に問題が生じます。一方冷間圧接や超音波接合、FSW(摩擦撹拌接合)などは固相接合と呼ばれる接合方法で、金属間化合物の影響は解決できますが、材料形状や設備の制約があるとともに、接合に時間がかかるなどの問題があります。
>>詳しく紹介!バット溶接によるアルミと銅(Al+Cu)の接合
また、動画でもアルミと銅(Al+Cu)の接合を確認頂けます。是非ご覧ください。
異種金属溶接の注意点
異種金属の接合全般に言える事ですが、異なる種類の金属が触れ合うところでは電気化学的腐蝕(電蝕)が発生します。そのため接合部分には、コーティング等の保護が必要になります。
バット溶接機の導入なら、当社にお任せください!
当ページでは、異種金属の溶接が求められる理由や、バット溶接のメリットを紹介させて頂きました。「こんな異種金属の接合を行いたいが最適な溶接方法がわからず困っている…」とお悩みの皆様、お気軽に当社にご相談ください。