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老朽化したフラッシュバット溶接機によく起こる不具合

製造現場では、30年・40年前に導入されたフラッシュバット溶接機が現役で稼働しているケースが少なくありません。当時の溶接機は非常に堅牢に作られており、長年にわたって使い続けられてきた実績がある一方で、老朽化に伴う「じわじわと起きる不具合」が現場を悩ませています。

本コラムでは、老朽化したフラッシュバット溶接機によく起こる不具合とその原因を解説します。「溶接品質が落ちてきた気がする」「何が悪いのかわからないまま使い続けている」という現場の担当者の方にぜひお読みいただければと思います。

なぜ今、老朽化の問題が深刻になっているのか

高度経済成長期から1990年代にかけて導入されたバット溶接機は、設計寿命をはるかに超えて稼働しているものが多数存在します。設備の更新が進まない背景には、「まだ動いているから」という判断だけでなく、「機械のことを熟知したベテラン担当者がすでに退職しており、今の担当者には何が正常で何が異常かわからない」という技術継承の問題も深く関わっています。

この「知っている人がいない」という状況こそが、老朽化不具合を見逃す最大のリスクと言えます。

よく起こる不具合①:制御基板の劣化・誤動作

フラッシュバット溶接機の「頭脳」にあたる制御基板は、経年劣化によってコンデンサの容量抜けや接触不良が発生します。その結果、フラッシュ工程やアプセット工程のタイミングが微妙にずれ、溶接条件が安定しなくなります。

問題の厄介なところは、目に見えるエラーが出ないまま溶接品質だけが低下するケースがあることです。「なんとなく溶接が弱くなった」「不良が増えた」という症状があるにもかかわらず、原因を特定できずに使い続けているケースが多く見受けられます。また、30〜40年前の制御基板は現在では製造中止となっている部品が多く、修理・交換が困難なケースも増えています。

よく起こる不具合②:電極の劣化・材質の変更

バット溶接において電極は、ワークを把持しながら電流を流すという重要な役割を担っています。この電極が劣化・変形していると、電流の流れが不均一になり、溶接が安定せずに接合不良につながります。

現場でよく見られるのが、「電極が摩耗したため、手近にある別の材質に交換した」というケースです。電極には導電性と耐熱性を兼ね備えたクロム銅やベリリウム銅などが使用されていますが、これを一般的な銅材や鉄材に交換してしまうと、電流密度や熱のかかり方が設計値から大きく外れ、品質トラブルの原因となります。「電極を換えた覚えはあるが、どんな材質にしたか記録がない」というケースも少なくありません。

よく起こる不具合③:摺動部の摩耗・動作不良

フラッシュバット溶接機は、フラッシュ工程でワークを微細に前進させ、アプセット工程で一気に加圧するという、精密な機械動作を繰り返します。この動作を担う摺動部(可動部)が摩耗・固着すると、動きが鈍くなったり、加圧スピードが低下したりします。

アプセット速度が遅くなると、加圧のタイミングで接合面の温度が低下してしまい、十分な固相接合が得られなくなります。「昔と同じ条件で溶接しているのに強度が出ない」という症状の原因として、この摺動部の摩耗が疑われるケースは多いです。清掃や交換といった定期メンテナンスが行われていない機械では、特に発生しやすい問題です。

よく起こる不具合④:油圧回路の異常

油圧式のフラッシュバット溶接機では、電極の移動に油圧サーボシリンダが使用されています。長年の使用によってオイルシールの劣化・油圧ポンプの摩耗・油圧バルブの固着などが発生すると、圧力が設定値どおりに出なくなります。

油圧回路の異常は、「加圧力が弱い」「圧力が不安定で毎回バラつく」といった症状として現れます。油圧計の読みは正常に見えても、シリンダ内部のオイル漏れによって実際の加圧力が低下しているケースもあり、目視では気づきにくい点が厄介です。

「何が悪いかわからない」を放置するリスク

老朽化した溶接機の不具合は複数の要因が重なっていることが多く、1箇所を直しても別の問題が表面化するケースがあります。また、溶接品質の低下は製品の強度不足・破断事故に直結するリスクもあります。「まだ動いているから大丈夫」という判断は、品質リスクと隣り合わせであることを認識しておく必要があります。

フラッシュバット溶接機のことならお気軽にご相談ください

老朽化したフラッシュバット溶接機の不具合は、「制御系」「電極」「機構部」「油圧系」の4つの視点から点検することが重要です。東京新電機では、現在ご使用の溶接機の状態診断や、最適な機種へのリプレイス提案など、溶接工程全体のお悩みに対応しています。「今の機械を使い続けるべきか、更新すべきか」といったご相談もお気軽にどうぞ。

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